05/03/2012
元気でいてね。
遠い昔、ここを歩いていた気がする。。。
ここから見る景色、ここで思い起こした出来事、人々、そしてここで過ごした日々。
ソファに触ってみる。ここに頭をもたげ本を読んだ。
丸いテーブルの感触は、こんなだったっけ。。。。?とフシギに感じる。
ベッドに横になる。ここでふたりで映画を見ながら眠りに落ちては夜中に起きて互いに笑い合っていたっけ。
子供達の笑い声が聞こえる。
涙が出る。
あの時に、もう戻ることはない。
その現実を知っているからこそ、今、ここに漂っている時間が甘く切ない。
彼が自分のそばを通り過ぎた。目で追い、思いを込めて呼んでみる。
ふと、彼が足を止めて後ろを振り向く。少し不思議な顔をしてちょっと上を見て、そしてちょっと悲しそうな顔をしてまた歩いてテーブルにつく。ひとりでお茶を飲む彼を見て、せつなくなり、ふと彼を抱きしめたくなる。だけど、それはまだできない。
子供達が笑いながらそれぞれの席に着く。おしゃべりに花を咲かせ、彼はひとりの静かな孤独な時間からにぎやかな明るい時間に戻る。
私は。。。。そこでただ微笑む。
みんな、元気でよかった。
楽しそうで良かった。
私のこと、時々考えてくれている?話しに出ている?懐かしく思ってくれている?恋しく思ってくれている?
そう思った途端、子供のひとりが口にする。
「ママ、このお茶がいちばん好きだったよね。」
彼の顔がふっと寂しそうになり、そしてゆっくり「うん」とうなずき微笑みに戻る。
にぎやかに喋っていた子供達が、ふっと過去に戻る。
妹が涙を急にためる。姉が肩を抱く。
私も、ふたりの肩に手を置く。
私は、いつもここにいるわよ。ずっと、守っているからね。幸せになるのよ。
彼が席を立ち、ダイニングからベッドルームに戻る。
ひとり椅子に座り、窓から見える緑を眺める。溜息。
ごめんね、先に行ってしまって。ひとりにして、ごめんね。
どうか、娘達をよろしくね。しっかりね。体にだけは気をつけてね。塩辛いものばかりをたくさん食べちゃだめよ。
彼が、娘達の所に戻り、夕飯、どこかに食べに行こう、と声をかける。
3人が笑顔に戻り、にぎやかに出かける支度を始める。
私も、行けたらいいのにな。。。。。
寂しいけど、しかたないね。
楽しんで来てね。うんと美味しいもの食べてね。
いつもいつもずっとずっと、愛しているから。
元気でいてくれて、ありがとう。
ばいばい、またね。ママ、また来れるかなー。来れたらいいな。
それまで、どうか、3人とも元気でいてね。
幸せでいてね。
またね。
天使達、ありがとう。もう、上に帰るから、また助けてね。
何度も振り返る。
何度も何度も3人を見つめる。
彼らの所に戻りたい。だけど、それはできない。
光がやって来て、私は足を前に進ませる。彼らを目で追いながら、ばいばい、と最後に言ってみた。
3人が、ふと突然同時に空を見上げた。
。。。。聞こえたの?
それだけで十分。
私は、涙を流しながら微笑んで上に吸い込まれる。
「愛しているよ。」
Setsu (節)
Psychic, Channeler, Medium, Healer, Spiritual adviser, Light worker